【必見】次世代生体認証技術”歩容認証”とその応用例に迫る!

テックブログ始めました!

こんにちは!株式会社アジラ執行役員CTOの若狭(@MasaWakasa)です。アジラは、”事件・事故を未然に防ぐ世界へ”をVisionに掲げ、施設向けAI警備システムの開発及び販売や高度認識AIを用いたソリューション事業を行う会社です。今回、アジラの技術を皆様により知ってもらうために、テックブログを始めました。アジラでの基礎研究から、開発体制や文化なども発信していく予定です。初回はアジラの基礎技術の1つであるマルチカメラトラッキングに関して紹介します。

 

 

次世代生体認証技術”歩容認証”とは

突然ですが皆さん、歩容という言葉は聞いたことがありますか?歩容とは動物の歩行パターンであり、実はこの個人を特徴づける様々な有益な情報が含まれています。そのため、1997年に初めて歩容を用いた人物認証に関する論文が発表されて以来、非常に多くの研究が発表されています。世界的には、大阪大学の産業科学研究所の研究のグループがとくに有名です。また、法律面でも2017年5月に施行された改正個人情報保護法では、歩容は顔の特徴量等と同列の”個人識別符号”であると明記されるなど、現在注目を集めている技術です。

 

アジラ社内での撮影動画をもとに歩容分析を実施した動画

 

”歩容認証”技術の必要性

歩き方は、歩幅や姿勢の違い、動き方(左右の比較含む)や腕の振り方の特徴などで明確な違いが見られます。歩容認証は、対象者がヘルメットやサングラス、マスクなどで顔が見えない状況においても利用できます。そのため、歩容認証は個人を特定する場合にも有効な認証技術であり、不審行動人物の特定など事件事故を未然に防ぐためにも必要な技術となってきています。

 

”歩容認証”で何が解決できるのか

歩容認証の技術は、カメラから遠く離れた人物の無意識の歩行に対しても適用可能です。顔がはっきり映らないような低解像度の場合であっても、その映像から歩容認証が可能です。歩容認証の技術を応用すれば、防犯・セキュリティなどの「安全・安心」のために違和感行動や不審行動をしている人物を特定し追跡して事件事故を未然に防ぐこと、高齢者施設や病院施設などでの利用者のケア支援、施設における誘導やショッピングの支援などにも役立ちます。

 

”歩容認証”の処理フロー

映像から歩容を用いた人物を同定する技術は、現在までに様々な例が報告されていますが、やはり近年はDeep Learningを用いた手法が主流になっています。具体的なフローとしては、下図に示すように、入力動画に対してまずは適切な処理を施して歩容情報の抽出を行います。その後、歩容情報をDeep Learningモデルに入力することで、その人物の歩容情報を凝縮した特徴量ベクトルを生成します。このベクトルと、別のベクトルとの距離を計算することで、距離が近い場合は同一人物、距離が遠い場合は別の人物であると認識します。

 


歩容特徴ベクトルを生成するDeep Learningモデルは、様々なモデルアーキテクチャが発表されていますが、やはり近年は流行であるViT (Vision Transformer)を用いた論文が増えてきています。アジラは、東京工業大学の篠田研究室と共同研究を行っており、日々歩容認証の精度向上に向け、独自の歩容認証機械学習モデルの研究開発を行っております。また、高精度のモデルを開発するためには、やはり学習データが大切となるため、アジラでは、ベトナムで多くのエキストラの方のサポートの元、独自の学習データの設計及び作成も行っています。

 

学習データ作成の様子

 

”歩容認証”技術の応用例

歩容認証技術は、顔認証等と異なり、街中のカメラ映像等の画角でも適用という点が、他の生体認証技術と大きく異なる点です。そのため、アジラのマルチカメラトラッキングもそのような環境下での利用を想定しています。例えば迷子/徘徊人の迅速な捜索や、不審行動人物の侵入経路分析、施設内の人流解析なども可能となります。将来的に次世代生体認証技術”歩容認証”を顔認証レベルまでの精度が実現すれば、入退館システムでの認証なども可能となります。既にアジラにおいても、本技術を活用した複数の製品開発が進行しており、今後ますます本技術の需要が高まることが期待されています。

 

 

 

マルチカメラトラッキング技術とは

アジラでは、歩容情報等を活用し、異なるカメラ及び日時においても、カメラに映る人物の同定が可能な、マルチカメラトラッキングの開発を行っています。人物の特徴としては、短期的に変動する特徴量(服装など)と、長期的にも変動しない特徴量(歩容や顔)に分けることができ、マルチカメラトラッキングではこれらの特徴を複合的に組み合わせることで、様々な環境下における人物同定を実現します。特徴的動作をもとに人物同定を行う技術に関しては、特許も取得させて頂いております。また、本技術は将来的には数千人単位での人物同定を実現する計画であり、大規模システムインフラ開発などにも力を入れています。
歩容認証技術(本技術)の適用には、個人情報に関して注意して取り扱わなければなりませんが、社内での有識者検討会議の実施や、大手IT企業様のサポートのもと個人情報保護委員会での審議などを通して、情報の取得保持方法に細心の注意を払いながら開発を行っております。

 

最後に

アジラでは、”事件・事故を未然に防ぐ世界”の実現に向け、日々様々な研究開発を行っております。アジラのVisionに共感して頂ける方、アジラの研究開発に興味をお持ち頂けた方、ぜひお話させてください!